名2
複数人に見せていた顔を、一人のものでしかないように書いた。じゃあいったい今まであなたに向けていた私は何なの、という話だ。
自分の醜さを残さなければ、みたいな事を考えて書き残そうとしていたが、それによって傷つけるのが分かっているのに書き残す事で、自分を馬鹿だと思われたくなかった。最後まで自分のことを考え、書いたものを差し戻して消える。
自分に関心が向けられているはずだ、という妄想に基づく行動。
名
ひとつ名を置いた。名は作ったものであるが、作られたものでもある。完成してしまった名であるなら、その名を名乗りながら、後から付け加えたり、変えたりしてはいけない。実名で生きていない事の弊害でもある。積み重ねたとしても、経験はその名に積み重なって、その名と関わった何か、誰か、と言うよりも、我が身の誇りを思えば、使い回しは汚れでしかない。
いつまでもガキのままでいるな。
やりたいこと
そうか、僕は一人暮らしがしたいんだ。完全に誰かの支配下から離れて、自活したいんだ。今は学校にいて、寮にいる。それは親元から離れたと言っても支配下にいるのは同じ事で、経済的には依存している。このまま卒業して会社勤めをしても同じ事で、今度は会社に依存するだけだ。
僕は自分自身できちんと自分自身の感情や思いに責任を持てるようになりたい。それに踊らされたくないんだ。誰かのせいでこうなったとか、ああなったとか思いたくない。この行動にお金は伴わないかもしれない。でもこれは、自分が一人前の人間らしく振舞うためにはどうしても必要な事なんだ。
僕は会社勤めをゴールだと思いがちだ。一旦勤めたら辞められないと。それがきっと間違いで、辞めてもいいんだと思えるようになれば、もっと自分の選択肢を持てる。僕は会社を辞めてもいい。そう考えれば、会社に勤めながら資格試験の勉強をする事だって苦にはならない。今この瞬間だって無駄ではない。将来のために、僕は今勉強できる空間にいるんだと思える。
僕は自由なんだ。
目標
僕はどんな進路を選択してもいい、そうだ。今更かと怒りかけたが冷静に考えれば何をしても許されるのなら、今すぐにここから抜け出してアルバイトをして資金を貯め、ゲーム制作の専門学校に通いたい。
住み込みのバイトをするにしてもそこまでの交通費と荷物の送料がまずは必要で、今日はそのためにバイト先を探して電話し、面接の予約を取り付けた。
また、面接先までの交通費にも事欠くレベルだったので本を売った。日雇いなのでとりあえずはこれで保つはず。
同時に、ゲームを作る、特にシナリオライターになると志したからにはシナリオを書かなければ始まらない。世界観を書き出す所から始めたところ、曖昧な部分も多々あった。発生段階にある文明を描く必要が生じたためそれについて調べる。歴史以前である以上「正解」は存在しない。歴史以後であっても、歴史もまた解釈の一種である以上真の意味での正解など無いのだが。創造する余地があるという事だ。空想世界中で矛盾なく溶けている設定を書き上げられればそれでいい。
難題であったため途中で投げ出してゲームに手を出してしまった。結果この時間になった。やりたいと思った事をやるのは構わないが、今は後悔している。本当にやりたい事を犠牲にし、時間を無駄にしてしまった。
ゲームは消した。
■
荒みきった一日だった。
無題
夢を見る。ずっと好きな人の夢を見る。
憎悪さえした人の夢を見る。
夢の中でも無視されるのだ。
僕の方も話しかける事ができない。
ずっと俯いている。
これ以上傷つきたくないから。
なあ、でもこれは僕がやった事の意趣返しだ。
僕が彼女を邪険にしたんだ。
そうする理由があったけど。
彼女にだってそうする理由があるんだろう。
それでもこれは全て僕の夢の中、
妄念に過ぎやしないから、
彼女はお前を思ってもいない。
今日
引き続きピングドラムを観ている。面白い。コメンタリーも含めて凄く、凄く人生に挑戦している人々の作ったものだと教えられる。
靴を履いてから駆け出そうとするかどうかが、大きく人生を左右している。僕は完全に履いてしまうタイプだった。僕もパッと駆け出せるようになりたい。
今日はずっと頭の中にあった妄想を、小説として出力した。短編ホラー。本当は音楽と一体になった映像で、ループものかつ神的なんだけど、その手前の子供時代の幻想の一場面という部分をクローズアップしてそこだけで完成させた。あれはPVであって、小説ではなかったから仕方がない。映像が作れないからと言って何もしないよりはずっとましだ。不満だけど、書けたことには満足している。書いている僕が一番怖かった。